名言
試みに一例をあげていはむ歟、
彼の曲亭の傑作なりける『八犬伝』の中の八士の如きは、
仁義八行の化物にて、
決して人間とはいひ難かり。
作者の本意も、
もとよりして、
彼の八行を人に擬して小説をなすべき心得なるから、
あくまで八士の行をば完全無欠の者となして、
勧懲の意を偶せしなり。
されば勧懲を主眼として『八犬伝』を評するときには、
東西古今にその類なき好稗史なりといふべけれど、
他の人情を主脳としてこの物語を論ひなば、
瑕なき玉とは称へがたし
坪内逍遥
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坪内逍遥
坪内 逍遥(つぼうち しょうよう、旧字体: 坪逍遙、1859年6月22日(安政6年5月22日) - 1935年(昭和10年)2月28日)は、日本の小説家、評論家、翻訳家、劇作家。小説家としては主に明治時代に活躍した。代表作に『小説神髄』『当世書生気質』及びシェイクスピア全集の翻訳があり、近代日本文学の成立や演劇改良運動に大きな影響を与えた。本名は
坪内雄蔵
つぼうちゆうぞう
。別号に「朧ろ月夜に如くものぞなき」の古歌にちなんだ春のやおぼろ(春廼屋朧)、春のや主人など。俳句も詠んだ。