諸君が努力する際には絶対むやみに進歩しようとしてはいけない。素質のとびきりすぐれた人はまずは皆無なのだから、学ぶ者が、聖人に一足とびに飛躍する道理など無い。起き上がったり転んだり、進んだり退いたりするのがあたりまえの努力なのである。昨日はちゃんと努力できたのに、今日になってできないからといって、むりにとりつくろって破綻のないようなふりをするのは、これこそがむやみに進歩しようとすることであって、さきの努力をさえもすっかりだめにしてしまうから、これは小さな過失ではない。たとえば、道行くひとが、けつまづいて転んだなら、おきあがってまた歩くようなものだよ。転ばなかったふりをして人を欺くことはないのである