名言
私は三十歳になるまで、
百事百敗、
何をやっても大した成功はおさめなかった。
だます人間をあまりにたくさん相手にしたからである。
しかし、
今になると、
これが私のたいへんな得になっただますことは一ペンコッキリだ。
あとが絶対通用しない。
そのうえ、
十を得たところで百を失い、
千を失う。
元も子もなくす損な生き方だ。
そこへいくと、
だまされるのは生来の馬鹿でないかぎり、
それによってたいへん知恵がつき、
用心深くなる。
二度と再び失敗せぬように警戒する。
それがあとでどれだけの得になるか、
測り知れない。
だまされるのが利口でないまでも、
だます方はよほどの大馬鹿ということになる
堤康次郎