名言大学

(新宿中村屋について)明治四十年、
中村屋は本郷春木町から新宿に引越してきた。
山之手方面に、
パン食の文化人が多いからというネライであった。
引越してきた当時は、
私の家の真ん前であった。
初代相馬愛蔵、
黒光夫妻と店員としては、
小僧二人であった。
私も幼いときだったから、
直接に見聞きしたわけではないが、
その小僧さんの一人が、
パンを買いにくる。
通り一つ隔てて、
こちらからみていると、
可笑しなことになる。
その買った袋を、
小僧さんは路地の裏に行って空にする。
買物客のサクラである。
そんな苦労もあったのである

田辺茂一

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