人物
煩悶せざる青年は、
人生初期において足らざる所あり。
食を絶ちて殺すは野蛮なり、
食を滅じて殺すは文明なり。
女子の涙は勝利の涙なり。
男子の涙は降伏の涙なり。
生命は刹那の事実なり、
死は永劫の事実なり。
女子は月経に支配され、
男子は月給に支配される。
善きことを思えるは善きことを思えるに過ぎず、
悪しき事を思えるは悪しき事を為したるなり。
女の秘密はヴェールのようなものだ。
なにかを隠すのではなく、
美しく見せるためだ。
酒に薬用の名あり、
酔を買うべき名義に窮するものは愚なり。
男子は、
一個の女性を礼賛するのにその全生命を以てするが、
全体の女性を礼賛するには舌のみを以てする。
戦争の前は憤怒なり、
戦争の中は悲惨なり、
戦争の後は滑稽なり。
女性が英雄を好むのは、
英雄に服従されようとしているのではない、
英雄を服従しようとしているのだ。
囚人は前科を誇り、
宗教家は懺悔を誇る。
長谷川 如是閑(はせがわ にょぜかん、1875年(明治8年)11月30日 - 1969年(昭和44年)11月11日)は、日本のジャーナリスト、文明批評家、評論家、作家。明治・大正・昭和と三代にわたり、新聞記事・評論・エッセイ・戯曲・小説・紀行と約3000本もの作品を著した。大山郁夫らとともに雑誌『我等』(後に『批判』)を創刊し、大正デモクラシー期の代表的論客の一人。「如是閑」は雅号、本名は萬次郎。