名言大学

(本は)ただ読めばいいのではありません。
本は上手に読まないと、
うそみたいに何ものこらない。

新しい知らない言葉というのは、
そのほどんどが、
ただ新しい名詞ばかりなのだ。
わたしたちが手にもつ言葉のなかで、
新しい知ら・・

急いではいけない ぬかみそを漬けるとわかる 毎日がゆっくりとちがってみえる 手がはっきりとみえる

夜 きみは 空を見あげて 星々のかずを かぞえます。
希望のかずを かぞえるように。

言葉を不用意に信じない。

風景と共存していくということを考える中で体験が受け継がれていかないといけないんじゃないかな。

いまためされているのは、
何をなすべきかでなく、
何をなすべきでないかを言い得る、
言葉の力です。

記憶という土の中に種子を播いて、
季節のなかで手をかけてそだてることができなければ、
ことばはなかなか実らない。

戦争になるや、
言葉は意味を失います。
いったん戦争が始まれば、
そこにはもう、
倒すべき「敵」しか存在しません。

本を閉じて、
目を瞑(つむ)る。
おやすみなさい。
すると、
暗闇が音のない音楽のようにやってくる。

無名なものを讃えることができるのが歌だ。

広い空の下に一人でいればわかる。
人間はじぶんでかんがえているほど確かな存在などではないのだ。

石(=墓碑)に最小限の文字を刻みこむように、
記憶に最小限のことばを刻むことは、
いまでも詩人の仕事の一つたりえているだろ・・

子どもの本になくてはならない三つのもの──「古くて歳とったもの」「小さいもの」「大切なもの」。

私が語るのではない。
私をとおしてこの世界が語るのだ。

樹は、
話すことができた。
話せるのは沈黙のことばだ。
そのことばは、
太い幹と、
春秋でできていて、......

今日、
建物をつくり、
市街をつくっているのは、
千の窓だと思う。
建物に窓があるのではないのだ。
いまでは、......

言いあらそっても、
はじまらない。
口をつぐんで、
済むことでもない。
 気にくわない、
頭にくる、......

一日一日が冒険なら、
人の一生の、
途方もない冒険には、
いったいどれだけ、
じぶんを支えられることばがあれば、
足りるだろう?......

どんなに古い真実も、
つねにいちばん新しい真実でありうる。
それが、
一冊の本にほかならないこの世界のひそめるいちばん慕(し・・

街歩きを楽しむには、
目をきれいにし、
耳をきれいにし、
心もきれいにしなければ、
何にもならない。

風景を壊す復興、
何もかも新しくしてというのは、
何か間違えている。
風景を取り戻さないと記憶というのは残らない。

森の木がおおきくなると、
おおきくなったのは、
沈黙だった。
 沈黙は、
森を充たす空気のことばだ。
 森のなかでは、......

書くとはじぶんに呼びかける声、
じぶんを呼びとめる声を書き留めて、
言葉にするということである。

わたしにとって、
詩は賦(ふ)である。
賦は「対象に対して詩的表現をもってこれを描写し、
はたらきかけるもので、
そのことがま・・

黙って朝のコーヒーを淹れる。
誰のものでもないその時間は、
じぶんを確かな一人としてかんじることができるのだ。
人生には何の・・

詩を書くことは、
目の前の日々から思いがけない真髄を抽きだすということ。

過ぎてゆく季節はうつくしい。

しばしば、
体験は言葉にはならないんだということがいわれる。
わかりっこないんだ、
と。
確かにそういえるだろうし、
体験がうけ・・

貝殻をひろうように、
身をかがめて言葉をひろえ。

(真実を見つけようと)必死になりすぎるのはまちがいだ。
真実というのは、
遠くに必死に探さなくとも見つかるはずだ。
すぐ近く・・

経験を人の経験として語ろうとすると、
覚えているか、
覚えていないかということになる。
人の経験じゃなくて、
(目に見える)風・・

(短歌や漢詩だけでなく)日本の歌もそうですが、
山と川で表現しているのは、
変わらないものがそこにある、
ということなんだ。

悲しみは窮(きわ)まるほど明るくなる。
秋の空はそのことを教える。

幸福は、
窓の外にもある。
樹の下にもある。
小さな庭にもある。

瞬間でもない、
永劫でもない、
過去でもない、
一日がひとの人生をきざむもっとも大切な時の単位だ。

無名であることの誇りこそが、
おろかな人間たちのあいだで生きるすべての猫たちに、
つねに独自の威厳をもたらしてきた。

「ゆたかさ」の過剰も「善意」の過剰もまた、
生きものを殺しうる。

ことばが信じられない日は、
窓を開ける。
それから、
外にむかって、
静かに息をととのえ、
齢の数だけ、......

不幸は数えない。
死んだ人間に必要なのは、
よい思い出だけだ。

音楽を聴きながら居眠りするときは、
幸福である。

食卓は、
ひとが一期一会を共にする場。

本を読むときに必要なものとしていちばん最初に求められるのは、
どういう本を読むかだと、
普通は考えられています。
しかし、
実・・

ひとはひとに言えない秘密を、
どこかに抱いて暮らしている。
それはたいした秘密ではないかもしれない。
けれども、
秘密を秘密と・・

見ることは、
聴くことである。

そうしなければいけないというんじゃない。
そうときまっているわけじゃない。
掟じゃなくて、
味は知恵だ。
こうしたほうがずっと・・

自分が「そのなか」で育った母語の温かさが、
自分の心の体温にほかならない。

じぶんを呼びとめる小さな声が、
どこからか聞こえて、
しばらくその声に耳を澄ますということが、
いつのころからか頻繁に生じる・・

どんなにおカネをもっていても、
おカネで買えないものが、
言葉です。

「そのなか」にいると、
「そのなか」にいる自分に気づきません。
「その外」にでてはじめて、
人は自分が「そのなか」にいたとい・・

長田 弘(おさだ ひろし、1939年11月10日 - 2015年5月3日)は、日本の詩人、児童文学作家、文芸評論家、翻訳家、随筆家。