名言大学

筋肉がつくと体重が重くなるし、
酸素の消費量が多くなるので、
高所登山には筋肉はあまり必要ないんです

体が華奢なので、
初めて会う方によく驚かれます

今ここにいる私の命は、
雪崩事故から私を救ってくれた多くの人たちからいただいたものなんです。
だから、
生涯かけて山で使い切りたい

お見舞いに来る人は『運がよかったね』と言ってくれるんです。
でも、
私の気持ちは複雑でした。
それでは同じ雪崩に遭って命を落としたふたりは、
ただ私より運が悪かっただけなのか?
そんなことであの出来事を片づけたくない

私の十四座登頂達成について、
「日本の登山の新しい扉を開いた」と言ってくれた人がいます。
でも、
違うのです。
新しいステージへと続く扉は、
とっくに開かれていた。......

山で偶然出会った人など大勢の方が、
身動きのできない私を日本の病院までリレー搬送してくれた。
私自身は、
彼らに感謝しながら、
心の中は自分に対する怒りでいっぱいでした

世界ではいまさらになっていた記録を、
これまで日本人がいまだに成し遂げられていなかったことが問題なのです

(14座登頂の偉業について)最初にイタリア人のメスナーが14座を制覇したのは26年も前ですし、
その後も20人以上が成功している。
だから記録としては大したことないんです

私自身が「運が良かった」と認めてしまうことは、
命を落としたアーネとアーンツの家族に対して、
「運が悪かったですね」と言うのと同じことです

私は子供の頃から走ることも泳ぐことも苦手。
球技もまったくできなかったので、
超人でもなんでもないんです

他のスポーツのプロ選手と同じように、
登山をプロスポーツと位置付け、
その世界の魅力を多くの人たちに伝えられる存在でありたいという決意を込めて、
私は「プロ登山家」の肩書きを使うことにしたのです

つい先日、
心肺機能を測定したら、
肺活量も何もかもごく普通の41歳でした。
この結果は自分でもちょっと残念でしたが(笑)

エベレストで意識不明に陥った体験も、
私の登山のキャリアの中では大きな失敗のひとつです。
しかし、
自分の登山人生を考えると、
このときの体験が、
山登りのプロフェッショナルへの入り口になりました

登頂の記録を残すために、
山頂では写真を撮らなければなりません。
カメラを出してシャッターを切る、
たったそれだけのことですが、
8000メートル峰のてっぺんでは、
たいへんな作業です

エベレストの頂上にたどり着いた瞬間、
「ついに地球の頂点に立った!」といった感動は特にありませんでした

標高8000メートルの高さを説明するときに、
私がよく言うのが「旅客機が飛んでいる高さ」というたとえです。
飛行機にのって8000メートル付近を飛んでいる時に、
窓の外を見てみてください。
そこまで歩いて登っていく人がいることを想像すれば、
少しはヒマラヤ登山のスケールを感じてもらえるのではないでしょうか

予定どおりにいく登山はあり得ないc

あの山に登りたい、
と思った瞬間から登山は始まります

ドイツ人クライマーのラルフ・ドゥイモビッツと出会ったことで、
今のスタイル(シェルパを雇わず、
酸素も使わず、
軽装備・少人数で登頂を目指す)に変えたんです

あくまで競争相手は自分なんです。
つらい、
もうやめたいと思う自分にチャレンジするスポーツとして、
高所登山は最高だと思っています

野球選手でもサッカー選手でも、
プロになったら、
『なぜ、
あなたは点を取るんですか?
』とは聞かれませんよね(笑)。
だから私も06年にプロ宣言して、......

高所登山は、
どうしても命がかかっちゃうんですね。
でも登山に限らず、
命をかけて臨む行為は崇高だと思っています

私にとって経験とは、
積み重ねるものではなく、
並べるものなのです

私が8000メートル級の山を14回登っていても、
次に登るときはまたゼロからのスタート。
そういう気持ちを保てるかどうか、
で想像がどこまで豊かにできるか、
は変わってくる

「プロ登山家は、
山に登らないときはどんなトレーニングをしているのですか?
」よくこんな質問を受けます。
毎日ランニングをしたり、
スポーツジムに通ったりしていると思われたのかもしれませんが、
私はこう答えます。......

いつもゼロの状態から始めたい。
できることならマイナスからスタートしたい、
といつも思っています

山というのは一つとして同じ山はない。
同じ山を登るのでも季節が変われば条件はまったく違いますし、
時間によっても山は表情を変えることがあります。
ですから、
一度登ったからあとは大丈夫、
ということは絶対にありません

経験というのはとても怖いものでもあって、
それを積むと、
その分だけ分かっているからと想像しなくなっちゃう危険性もあるんです

登山は「登頂」がゴールではないんです。
頂上は「通過点」の一つでしかない。
「折り返し地点」かどうかさえも、
すべての行程を終えてみないとわからないものなんです

僕らのようなプロ登山家でも、
後進を育成することには限界があると思っています。
基本的には発掘することしかできない。
ただ、
良いことも悪いことも含めて後進に伝えて行くことは大事で、
それは自分の重要な役割だろうとは思います

人が人を育てるのではなくて、
山という環境が登山家を育てる

山というのはそこにいるだけでリスクがありますから、
そのリスクに晒される時間はできるだけ短い方がいい

まだまだ他にも登りたい山はたくさんありますし、
登った山でも別のルートから登ってみたい。
だから爆発的な喜びや達成感を、
あまり感じられないのかもしれません

これだけ無数に山があって、
14座を登っただけでとても山の神髄を究めたとは思えないわけですね

一生に一度の記念でエベレストに登るとかだと喜びのピークがあるのかもしれないですけど、
私はやっぱり毎年のように登山を続けてきて、
好きな山をどれだけ続けていけるかということを考えてます

(登頂後に)いつも思うのは、
もう登らなくて良いんだってこと。
そこから先は空しかないですからね

想像を楽しむために、
まともに呼吸もできない辛さが待っているのを承知で、
私は超高所の頂を目指し、
下りてくるのです

経験に頼るのではなく想像を広げながら登るからこそ、
新しいことも見えてくる

経験が増えれば増えるほど、
数多くのディテールが知識となって記憶にインプットされます。
そのディテールとディテールとの隙間を埋めていく作業が想像です

竹内 洋岳(たけうち ひろたか、1971年1月8日 - )は、日本の登山家。世界で29人目で、日本人唯一の8000メートル峰全14座の登頂者。立正大学客員教授。『文部科学大臣顕彰、スポーツ功労者顕彰』、第17回「植村直己冒険賞」、第15回「秩父宮記念山岳賞」を受賞。