名言大学

私が本気でお説教らしきものをしたのは一回だけです。
子どものときではなく大人になってからです。
プロ2年目の1994年オフ。
日本シリーズで西武ライオンズを4勝2敗で倒し、
日本一になり、
故郷に凱旋したときでした。
辺りが薄く暗くなった夕刻、
家の前は報道陣とファンでごった返していきました。
そこへ秀喜がタクシーに乗って帰ってきたのです。
秀喜がタクシーを降り、
周囲を一瞥し、
手をあげた瞬間、
私はドキッとしました。
さりげない動作の中に天狗になってるというか、
スター気取りというか、
いやな雰囲気を感じ取ったのです。
秀喜の瞳の中には明らかにおごりの光が宿っていました。
その夜、
わたしは秀喜に対し、
言葉を選びながら初めてこんこんと思いを語りました。
「主観的に自分を見てはいけません。
客観的に立場を見なさい。
周囲の人、
たとえばマスコミやファンは野球選手として、
バットマンとしての一面を見て、
美化しているにすぎません。
人間性とか、
ほかの面で評価しているのではないのです。
秀喜は自分では気付かないだろうが、
あの態度は少し変だ。
お父さんはまるで凱旋将軍のように感じられました。

引用:「秀さんへ。

松井昌雄 文藝春秋

松井昌雄(父)

松井昌雄(父)

松井 昌雄(まつい まさお、旧姓:西尾(にしお)、1942年3月28日 - )は、日本の宗教家・歌手・実業家。石川県金沢市出身。松井秀喜の父として知られる。

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