名言大学

牛は急ぐ事をしない 牛は力いっぱいに地面を頼って行く 自分を載せてゐる自然の力を信じきって行く ひと足、
ひと足、
牛は自分の道を味はって行く

高村光太郎

僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る

高村光太郎

牛はのろのろと歩く どこまでも歩く 自然に身を任して 遅れても、
先になっても 自分の道を自分で行く

高村光太郎

道端のがれきの中から黄金を拾い出すというよりも、
むしろがれきそのものが黄金の仮装であったことを見破る者は詩人である

重いものをみんなすてると、
風のように歩けそうです

高村光太郎

新郎と新婦と手をとりて立てり 汝等は愛に燃え、
情欲に燃え 絶大の自然と共に猛進せよ

私はあなたの愛に値しないと思ふけれど あなたの愛は一切を無視して私をつつむ

女が付属品を棄てるとどうしてこんなにも美しくなるのだろうか

高村光太郎

母を思ひ出すとおれは愚にかへり、
人生の底がぬけて怖いものがなくなる。
どんな事があらうともみんな死んだ母が知つてるやうな気がする

愛する心のはちきれた時 あなたは私に会ひに来る

進歩は実に遅く不確かなものです。
やがて出しぬけに其が啓かれます

高村光太郎

いったん此世にあらわれた以上、
美は決して滅びない

高村光太郎

牛は自分の孤独をちゃんと知っている 牛は食べたものを又食べながら ぢっと淋しさをふんごたえ さらに深く、
さらに大きい孤独の中にはいって行く

一生を棒に降りし男此処に眠る 彼は無価値に生きたり

詩を書かないでいると死にたくなる人だけ死を書くといいと思います

前後のわからないような、
むつかしい考に悩んだりする事がある度に、
小父さんはまず足の事を思ってみる。
自分がほんとにしっかり立って、
頭を上にあげているかしらと思ってみる

高村光太郎

待つがいい、
さうして第一の力を以て、
そんな問に急ぐお前の弱さを滅ぼすがいい

土壌は汚れたものを恐れず 土壌はあらゆるものを浄め 土壌は刹那の力をつくして進展する

高村光太郎

お前の第一の為事は何を措いてもようく眠る事だ 眠つて眠りぬく事だ 自分を大切にせよ

心の地平にわき起るさまざまの物のかたちは入りみだれて限りなくかがやきます。
かうして一日の心の営みをわたしは更け渡る夜に果てしなく洗ひます

高村光太郎

予約された結果を思ふのは卑しい。
正しい原因に生きる事、
それのみが浄い

彼は人間の卑小性を怒り、
その根元を価値観に帰せり

五臓六腑のどさくさとあこがれとが訴へたいから 中身だけつまんで出せる詩を書くのだ。
詩が生きた言葉を求めるから 文(あや)ある借衣を敬遠するのだ

高村光太郎

わたくし事はけちくさいから 一生を棒にふつて道に向ふのだ

人間のからだはさんぜんとして魂を奪ふから 裸といふ裸をむさぼつて惑溺するのだ

私は人から離れて孤独になりながら あなたを通じて再び人類の生きた気息に接します ヒユウマニテイの中に活躍します すべてから脱却してただあなたに向ふのです 深いとほい人類の泉に肌をひたすのです

おれは思ふ、
人間が天然の一片であり得る事を。
おれは感ずる、
人間が無に等しい故に大である事を。
ああ、
おれは身ぶるひする、......

命の糧は地面からばかり出るのぢやない 都会の路傍に堆く積んであるのを見ろ そして人間の生活といふものを考へる前に まづぢつと翫味しようと試みろ

貴様一人や二人の生活には有り余る命の糧が地面から湧いて出る 透きとほつた空気の味を食べてみろ そして静かに人間の生活といふものを考へろ

こころよわがこころよ ものおぢするわがこころよ おのれのすがたこそずゐいちなれ

高村光太郎

みしらぬわれのかなしく あたらしきみちはしろみわたれり さびしきはひとのよのことにして かなしきはたましひのふるさと

高村光太郎

かぎりなくさびしけれども われはすぎこしみちをすてて まことにこよなきちからのみちをすてて いまだしらざるつちをふみ かなしくもすすむなり

高村光太郎

いやなんです あなたのいつてしまふのが――

高村光太郎

日常の瑣事にいのちあれ 生活のくまぐまに緻密なる光彩あれ われらのすべてに溢れこぼるるものあれ われらつねにみちよ

汝を生んだのは都会だ 都会が離れられると思ふか 人間は人間の為した事を尊重しろ 自然よりも人口に意味ある事を知れ

自然に向へ 人間を思ふよりも生きた者を先に思へ 自己の王国に主たれ 悪に背け

詩の翻訳は、
結局一種の親切に過ぎない

高村光太郎

進歩は実に遅く不確かなものです。
やがて出しぬけにそれがひらかれます。
人は前に出ます。
けれども暗中模索の幾年かあとの事です

高村光太郎

わたしの手からとつた一つのレモンを あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ トパアズいろの香気が立つ

高村光太郎

そんなにもあなたはレモンを待つてゐた かなしく白くあかるい死の床で

私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、
切つても切れないむかしなじみのきれいな空だ

高村光太郎

智恵子は東京に空が無いといふ、
ほんとの空が見たいといふ

高村光太郎

――何といふ光だ 何といふ喜だ

高村光太郎

僕にとつてあなたは新奇の無尽蔵だ

高村光太郎

僕はあなたをおもふたびに 一ばんぢかに永遠を感じる

高村光太郎

私の生(いのち)を根から見てくれるのは 私を全部に解してくれるのは ただあなたです

世界がわかわかしい緑になつて 青い雨がまた降つて来ます

高村光太郎

小鳥のやうに臆病で 大風のやうにわがままな あなたがお嫁にゆくなんて

わがこころはいま大風の如く君にむかへり

高村光太郎

をんなが をんなを 取りもどすのは かうした 世紀の修行によるのか

高村光太郎

高村光雲(父)