子供たちには ありったけの物語を話してきかせよう やがでどんな運命でも ドッジボールのように受けとめられるように

茨木のり子の他の名言

まきこまれ ふりまわされ くたびれはててある日 卒然と悟らされる もしかしたら たぶんそう 沢山のやさしい手が添えられたのだ 一人で処理してきたと思っている わたくしの幾つかの結節点にも 今日までそれと気づかせぬほどのさりげなさで
落ちこぼれの実 いっぱい包容できるのが豊かな大地 それならお前が落ちこぼれろ はい 女としてとっくに落ちこぼれ 落ちこぼれずに旨げに成って むざむざ食われてなるものか 落ちこぼれ 結果ではなく 落ちこぼれ 華々しい意思であれ
だいたいお母さんてものはさ しいんとしたとこがなくちゃいけないんだ
おばあちゃまは怒る 梅干ばあちゃま 魚をきれいに食べない子は追い出されます お嫁に行っても三日ともたず返されます 頭と尻尾だけ残し あとはきれいに食べなさい お嫁になんか行かないから 魚の骸骨みたくない
言葉が多すぎる というより 言葉らしきものが多すぎる というより 言葉と言えるほどのものが無い この不毛 この荒野 賑々しきなかの亡国のきざし さびしいなあ うるさいなあ 顔ひんまがる
なぜ国歌など ものものしくうたう必要がありましょう おおかたは侵略の血でよごれ 腹黒の過去を隠しもちながら 口を拭って起立して 直立不動でうたわなければならないか 聞かなければならないか 私は立たない 坐っています
戦争責任を問われて その人は言った そういう言葉のアヤについて 文学方面はあまり研究していないので お答えできかねます 思わず笑いが込みあげて、どす黒い笑い吐血のように 噴きあげては 止り また噴きあげる
生きてゆくぎりぎりの線を侵されたら 言葉を発射させるのだ ラッセル姐御の二丁拳銃のように 百発百中の小気味よさで
はじめての町に入ってゆくとき わたしはポケットに手を入れて 風来坊のように歩く たとえ用事でやってきてもさ お天気の日なら 町の空には きれいないろの淡い風船が漂う その町の人たちは気づかないけれど はじめてやってきたわたしにはよく見える なぜって あれは その町に生まれ その町に育ち けれど 遠くで死ななければならなかった者たちの 魂なのだ そそくさと流れていったのは 遠くに嫁いだ女のひとりが ふるさとをなつかしむあまり 遊びにやってきたのだ 魂だけで うかうかと
年老いても咲きたての薔薇 柔らかく 外にむかってひらかれるのこそ難しい

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