「年老いても咲きたての薔薇 柔らかく 外にむかってひらかれるのこそ難しい」
茨木のり子
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「年老いても咲きたての薔薇 柔らかく 外にむかってひらかれるのこそ難しい」
茨木のり子
「満員電車のなかで したたか足を踏まれたら 大いに叫ぼう あんぽんたん! いったいぜんたい人の足をなんだと思ってるの」
茨木のり子
「大人になってもどぎまぎしたっていいんだな ぎこちない挨拶 醜く赤くなる 失語症 なめらかでないしぐさ 子供の悪態にさえ傷ついてしまう 頼りない生牡蠣のような感受性 それらを鍛える必要は少しもなかったのだな」
茨木のり子
「ことば ことば おんなのことば しなやかで 匂いに満ち あやしく動くいきものなのだ ああしかしわたくしたちのふるさとでは 女の言葉は規格品 精彩のない冷凍もの わびしい人口の湖だ」
茨木のり子
「いとしい人には 沢山の仇名をつけてあげよう 小動物やギリシャの神々 猛獣なんかになぞらえて 愛しあう夜には やさしい言葉を そっと呼びにゆこう 闇にまぎれて」
茨木のり子
「大人になるというのは すれっからしになることだと 思い込んでいた少女の頃、立居振舞の美しい 発音の正確な素敵な女のひとと会いました そのひとは私の背のびを見すかしたように、なにげない話に言いました。初々しさが大切なの。人に対しても世の中に対しても。人を人とも思わなくなったとき 堕落が始るのね 堕ちてゆくのを 隠そうとしても 隠せなくなった人を何人も見ました 私はどきんとし、そして深く悟りました」
茨木のり子
「人間は誰でも心の底に しいんと静かな湖を持つべきなのだ」
茨木のり子
「ひとりの人間の真摯な仕事は おもいもかけない遠いところで 小さな小さな渦巻きをつくる」
茨木のり子
「わたしが一番きれいだったとき わたしはとてもふしあわせ わたしはとてもとんちんかん わたしはめっぽうさびしかった だから決めた できれば長生きすることに 年とってから凄く美しい絵を描いた フランスのルオー爺さんのように ね」
茨木のり子
「一人でいるのは賑やかだ 誓って負け惜しみなんかじゃない 一人でいるとき淋しいやつが 二人寄ったら なお淋しい おおぜい寄ったなら だ だ だ だ だっと 堕落だな」
茨木のり子
「苛立つのを 近親のせいにはするな なにもかも下手だったのはわたくし」
茨木のり子
「わたしが一番きれいだったとき 誰もやさしい贈り物を捧げてはくれなかった 男たちは挙手の礼しか知らなくて きれいな眼差だけを残し皆(みな)発っていった」
茨木のり子