「ばさばさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて」
茨木のり子
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「ばさばさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて」
茨木のり子
「もっと強く願っていいのだ わたしたちは明石の鯛が食べたいと もっと強く願っていいのだ わたしたちは幾種類ものジャムがいつも食卓にあるようにと もっと強く願っていいのだ わたしたちは朝日の射す明るい台所がほしいと」
茨木のり子
「わたしが一番きれいだったとき わたしはとてもふしあわせ わたしはとてもとんちんかん わたしはめっぽうさびしかった」
茨木のり子
「私の意志で、葬儀・お別れ会は何もいたしません。この家も当分の間、無人となりますゆえ、弔慰の品はお花を含め、一切お送り下さいませんように。返送の無礼を重ねるだけと存じますので。“あの人も逝ったかと一瞬、たったの一瞬思い出して下さればそれで十分でございます」
茨木のり子
「初々しさが大切なの 人に対しても世の中に対しても 人を人とも思わなくなったとき 堕落が始まるのね」
茨木のり子
「初心消えかかるのを暮しのせいにはするな そもそもがひよわな志にすぎなかった」
茨木のり子
「人間だけが 息つくひまなく動きまわり 忙しさとひきかえに 大切なものを ぽとぽとと落としてゆきます」
茨木のり子
「あなたはエジプトの王妃のように たくましく 洞窟の奥に座っている あなたへの奉仕のために 私の足は休むことをしらない あなたへの媚(こび)のために くさぐさの虚飾に満ちた供物を盗んだ けれど私は一度も見ない 暗く蒼いあなたの瞳が 湖のように ほほえむのを 睡蓮のように花ひらくのを」
茨木のり子
「落ちこぼれ 和菓子の名につけたいようなやさしさ 落ちこぼれ 今は自嘲や出来そこないの謂 落ちこぼれないための ばかばかしくも切ない修業 落ちこぼれこそ 魅力も風合いも薫るのに」
茨木のり子
「もはや できあいの思想には倚りかかりたくない もはや できあいの宗教には倚りかかりたくない もはや できあいの学問には倚りかかりたくない もはや いかなる権威にも倚りかかりたくない ながく生きて 心底学んだのはそれぐらい」
茨木のり子
「なぜだろう 萎縮することが生活なのだと おもいこんでしまった村と町 家々のひさしは上目づかいのまぶた おーい 小さな時計屋さん 猫背をのばし あなたは叫んでいいのだ 今年もついに土用の鰻と会わなかったと」
茨木のり子
「軌道を逸れることもなく いまだ死の星にもならず いのちの豊饒を抱えながら どこかさびしげな 水の星 極小の一分子でもある人間がゆえなくさびしいのもあたりまえで あたりまえすぎることは言わないほうがいいのでしょう」
茨木のり子