好きだと言えなかった夜に――恋愛映画の名言36選

好きだと言えなかった夜に――恋愛映画の名言36選

2026/8/2336 件の名言

恋の言葉は、たいてい間に合いません。言うべきだった一言は、駅の改札を抜けたあとに思いつきます。言われたかった一言は、別れたあとになって、ようやくその形がわかります。

だから私たちは恋愛映画を観るのかもしれません。スクリーンの中の誰かが、私たちの代わりに言ってくれるからです。逡巡も、格好悪さも、決定的な瞬間の震えも、二時間のうちにきちんと言葉にしてくれる。観終わったあとに残るのは物語ではなく、たったひとつのセリフだったりします。

ここでは、心に残る恋愛映画の名台詞と、そういう映画をつくってきた人たちが語った愛の言葉を、恋のいろんな段階に沿って並べました。告白の前夜にも、うまくいっている日にも、終わってしまった翌朝にも、どこかに効く言葉があるはずです。


好きだ、と伝えるまで ── 告白の名台詞

告白の言葉に、うまさは要りません。必要なのは、自分を守るための鎧を一枚脱ぐことだけです。

「忘れないで。私だってただの女の子。一人の男の子の前に立って、愛してほしいと願っているだけなの」
── アナ・スコット(『ノッティングヒルの恋人』のハリウッド女優)

世界的スターが、街の小さな書店主に向かって言う一言です。彼女はここで「女優」という肩書きを自分から降ろしています。愛を求めるとき、人は必ず一度、無防備な位置まで降りてこなければならない。その手続きを、この台詞ほど短く示したものはそう多くありません。

肩書きや実績は、恋の場面ではほとんど役に立ちません。むしろ邪魔をします。相手に届くのは「ただの一人の人間として、あなたを必要としている」という一行だけです。

「雫、大好きだ!」
── 天沢聖司(アニメ映画『耳をすませば』の中学生。バイオリン職人を志す)

わずか七文字です。比喩もなければ、前置きもありません。けれどこの短さこそが誠実さの証明になっています。長く語れば語るほど、人は自分の格好よさを守ろうとしてしまうからです。

告白がうまくいかない人の多くは、言葉が足りないのではなく、言葉が多すぎます。伝えるべき中身は、たいていの場合、名前と「好きだ」の二語で足ります。

「おまえを乗せて……坂道のぼるって……決めたんだ!」
── 天沢聖司(アニメ映画『耳をすませば』の中学生。バイオリン職人を志す)

自転車の後ろに人を乗せて坂を上るのは、単純に重い。それでも自分が漕ぐと宣言する。この台詞が愛の告白として響くのは、快楽ではなく負担を引き受ける約束になっているからです。

誰かを好きになるというのは、相手の重さを引き受ける許可を自分に出すことでもあります。軽やかな言葉より、この息切れまじりの宣言のほうが、ずっと遠くまで届きます。

「亜紀といると楽しいし、亜紀といるとすぐに時間が経ってしまいます。今更ですが、僕と付き合ってください」
── 松本朔太郎(映画『世界の中心で、愛をさけぶ』の高校生)

カセットテープに吹き込まれた、たどたどしい告白です。文学的な表現はひとつもなく、事実の報告と依頼だけでできています。それでも観客の胸に残るのは、事実がそのまま気持ちだからでしょう。

「一緒にいると時間が早い」というのは、恋の最もわかりやすい生理現象です。凝った比喩を探す前に、自分の身体に起きていることをそのまま言葉にしてみる。それが一番強い告白になることがあります。

「あなたが『ハロー』と言ったときから、私はもうあなたのものだったの」
── ドロシー・ボイド(映画『ザ・エージェント』のヒロイン。シングルマザーの経理担当)

主人公は部屋いっぱいの人の前で、長い長い愛の演説をします。その全部を、彼女はこの一言で無効にしてしまう。もう最初の挨拶で決まっていたのだ、と。

説得された恋は、たぶん恋ではありません。理屈が届く前に、もう決まっている。だからこそ、口説き文句を磨くより、最初の「こんにちは」を丁寧に言うほうが実は近道なのかもしれません。

「同じさ」
── サム・ウィート(映画『ゴースト/ニューヨークの幻』の主人公。銀行員)

恋人が「愛してる」と言うたびに、彼は「同じさ」としか返しません。彼女はそれが不満です。そして彼が言葉を惜しんだまま、二人は引き裂かれます。

この台詞が名台詞になっているのは、格好いいからではなく、後悔の教科書だからです。言えるうちに言っておかなかった一言は、必ずあとで重さに変わる。この映画は二時間かけて、その事実だけを伝えてきます。

「隣の席に座ったこともあるんだぞ。」
── 天沢聖司(アニメ映画『耳をすませば』の中学生。バイオリン職人を志す)

好きだと言うかわりに、見ていた時間の長さを告白しています。相手が気づいていなかった日々を、こちらは全部覚えている。恋の非対称は、たいていここから始まります。

言えなかった時間そのものが、実は一番の証拠です。「ずっと見ていた」と言うことは、「ずっと好きだった」と言うことと、ほとんど同じ意味を持ちます。


出会いは、いつも一瞬 ── 恋が始まる場所

恋の始まりは、選択というより事故に近いものです。だから恋愛映画は、いつも「あの日、あの場所で」の話になります。

「一秒の差で出会えなかった二人を想像してみろ」
── ウォン・カーウァイ(香港の映画監督。『恋する惑星』『花様年華』)

すれ違う人ごみの中で、誰と誰が出会うかを決めているのは、ほんの数秒のずれです。監督はそのずれを、映画の中で執拗に描いてきました。

これは運命論のようでいて、実は逆のことを言っています。運命があらかじめ決まっているのではなく、あまりに脆い偶然が、あとから運命という名前で呼ばれるだけなのだ、と。だから出会いは、大切に扱うに値します。

「君の瞳に乾杯」
── リック・ブレイン(映画『カサブランカ』の主人公。酒場の経営者)

原語では "Here's looking at you, kid." という、直訳すれば何ということもない一言です。それを日本語字幕がこう置き換えたことで、この台詞は日本の観客にとって永遠のものになりました。

翻訳が原文を超えてしまった稀な例です。同時に、恋の言葉というものが「意味の正確さ」ではなく「差し出し方」で決まることも教えてくれます。何を言うかより、どう言うか。恋の言葉はいつもそちら側にあります。

「私たちは会えば絶対すぐに分かる」
── 宮水三葉(アニメ映画『君の名は。』のヒロイン。糸守町の神社の娘)

名前も顔も忘れてしまったのに、会えば分かるという確信だけが残っている。この矛盾こそが、恋の記憶の性質をよく表しています。

私たちが誰かを覚えているとき、覚えているのは情報ではありません。一緒にいたときの体温や、空気の密度のようなものです。だから情報が全部消えたあとでも、確信だけは最後まで残ります。

「ハートはハートが望むものを望むんだ。そこにロジックなどない。誰かと出会って恋に落ちる、それだけだ」
── ウディ・アレン(アメリカの映画監督・脚本家。『アニー・ホール』)

理屈っぽさで知られる作家が、恋についてだけは理屈を放棄しています。条件でも相性診断でもなく、ただ落ちる。身も蓋もない言い方ですが、経験に照らせばだいたい正しい。

恋の相手を条件で説明しようとすると、必ずどこか嘘になります。説明できないことを、無理に説明しないでおく。それも誠実さのひとつのかたちです。

「ローマです。何と申しましてもローマです」
── アン王女(映画『ローマの休日』の主人公。某国の王女)

訪問した都市の中でどこが一番でしたか、という記者の質問への答えです。公式の場で、公式の言葉づかいのまま、彼女は個人的な告白をしています。会見場にいる一人にだけ届く恋の言葉を、全世界に向かって言っている。

言えないときほど、人は言い方を発明します。この台詞の美しさは、感情そのものではなく、感情を隠したまま伝えようとする工夫のほうにあります。

「地上のすべてをあきらめたら、人はいつか空を飛べると誰かが言った」
── 山音麦(映画『花束みたいな恋をした』の主人公。イラストを描く大学生)

好きなものが完全に一致した二人が、社会に出るにつれてすり減っていく物語です。この一行は、その始まりと終わりの両方を挟むように置かれています。

恋の始まりに聞こえていた言葉が、終わりには別の意味に聞こえる。恋愛映画がしばしば同じ台詞を二度使うのは、変わったのは言葉ではなく自分たちだ、と示すためです。


そばにいる、という約束

好きだと伝えたあとに始まるのが、本当の恋愛です。そこでは言葉より、繰り返される行為のほうが物を言います。

「君が飛ぶなら、僕も飛ぶ」
── ジャック・ドーソン(映画『タイタニック』の主人公の青年画家)

船尾から身を投げようとする彼女を止めるために、彼が口にした言葉です。そしてこの一言は、のちに二人の合言葉になり、最後には彼女が彼を助けに戻る理由になります。

その場しのぎで言ったはずの言葉が、時間をかけて誓いに育つことがあります。愛の約束は、たいてい厳粛な場面では生まれません。とっさに出た一言を、あとから本気で守ろうとするところから始まります。

「人生は贈り物だと思ってます。ムダにしたくない」
── ジャック・ドーソン(映画『タイタニック』の主人公の青年画家)

これは恋の言葉ではなく、生き方の宣言です。けれど彼女が惹かれたのは、まさにこの姿勢のほうでした。

誰かを本気で好きになるとき、私たちは相手の顔立ちではなく、相手の生き方の速度に惹かれています。愛される人になろうとするより、自分の一日を無駄にしない人になること。恋の入口は案外そこにあります。

「言おうと思ったんだ、お前がどこの世界にいても、俺が必ずもう一度会いに行くって」
── 立花瀧(アニメ映画『君の名は。』の主人公。東京の男子高校生)

待つのではなく、探しに行く。この台詞の主語がすべて「俺が」であることに注目したいところです。

関係が続くかどうかを決めるのは、しばしば「どちらが先に動くか」です。相手の出方を待っている間に、たいていのものは冷めます。会いに行く側になると決めることは、それ自体が愛の内容です。

「簡単じゃない。すごく大変だろう。それでも僕は毎日、そのために努力する。君が欲しいから」
── ノア・カルフーン(映画『きみに読む物語』の主人公。木材工場で働く青年)

甘い言葉ではありません。これから苦労するという予告です。そのうえで、毎日そのために働くと言っている。

愛を「感情」だと思っていると、感情が薄れた日に途方に暮れます。愛を「日課」だと考えられる人だけが、長い時間を渡っていけます。この台詞は、恋愛映画の中でも珍しく、労働としての愛を語っています。

「人生においてしっかりつかまえておきたい最高のものは、お互いの存在」
── オードリー・ヘプバーン(『ローマの休日』の主演女優。晩年はユニセフ親善大使)

つかまえておきたいのは相手ではなく「お互い」だ、と言っています。所有ではなく、二人でひとつの状態を守るということです。

恋がうまくいかなくなるときは、たいてい主語が「私」か「あなた」のどちらかに偏っています。主語を「お互い」に戻せるかどうかが、関係の寿命を決めます。

「愛は行動なのよ。言葉だけではだめなの」
── オードリー・ヘプバーン(『ローマの休日』の主演女優。晩年はユニセフ親善大使)

名台詞ばかりを並べたこの記事にとって、いささか耳の痛い一言です。けれど、だからこそ必要な一言でもあります。

言葉は入口にすぎません。映画の中で最も心を打つ場面が、たいていセリフのない場面であるように、愛の証拠はいつも行動の側に置かれています。名台詞を集めることの意味は、覚えることではなく、明日それを実行してみることのほうにあります。


すれ違いと、切なさの正体

恋愛映画の半分は、うまくいかない話です。そしてその半分のほうが、あとあとまで残ります。

「食べ物の好みが変わるように、人も変わる。ただそれだけのことだ」
── ウォン・カーウァイ(香港の映画監督。『恋する惑星』『花様年華』)

別れの理由を探しても、たいてい見つかりません。誰かが悪かったわけでも、何かが決定的に壊れたわけでもない。ただ、好みが変わった。

残酷な言い方に聞こえますが、これは同時に救いでもあります。自分が悪かったから終わったのだと思い込むより、人は変わるものだと引き受けるほうが、次の恋に進めます。

「長続きするたった一つの愛は片想い」
── ウディ・アレン(アメリカの映画監督・脚本家。『アニー・ホール』)

叶わないからこそ、その恋は劣化しません。生活も、喧嘩も、幻滅も入ってこない。皮肉として言われた一行ですが、片想いをしている人にとっては、少しだけ誇らしい真実でもあります。

長続きする愛が良いとは限らない、という裏の意味も読めます。終わる恋には、終わるだけの中身があった。それは失敗ではなく、単に完了です。

「恋をすることは苦しむことだ。苦しみたくないなら、恋をしてはいけない。でも、そうすると、恋をしていないということでまた苦しむことになる」
── ウディ・アレン(アメリカの映画監督・脚本家。『アニー・ホール』)

どちらを選んでも苦しい、という完全な袋小路です。この論法の見事さは、逃げ道を全部塞いだうえで、笑いに変えているところにあります。

苦しさを避けられないなら、どうせなら意味のあるほうの苦しさを選ぶ。この台詞を読んだあとに残るのは、絶望ではなく、そういう開き直りです。

「私はずっとあなたを愛してる」
── ミア・ドーラン(映画『ラ・ラ・ランド』のヒロイン。女優を目指す)

これは結ばれる場面の台詞ではなく、別れる場面の台詞です。愛しているという言葉が、そのまま別れの言葉として使われる。恋愛映画がたどり着いた、ひとつの成熟したかたちだと思います。

一緒にいることと愛していることは、必ずしも同じではありません。別々の道を行くと決めたあとでも、愛していたという事実は取り消されない。そのことを認めるのに、私たちは何年もかかります。

「君と幸せだったパリの思い出があるさ」
── リック・ブレイン(映画『カサブランカ』の主人公。酒場の経営者)

彼は彼女を手放します。そのうえで、失われないものを一つだけ数え上げる。過去は奪えない、という宣言です。

別れのあとに残るものを「思い出」と呼ぶと、少し安っぽく聞こえます。けれど実際には、それは誰にも編集できない既成事実です。うまくいかなかった恋にも、確かに幸せだった日付があります。

「君も、いつかちゃんと幸せになりなさい」
── 奥寺ミキ(アニメ映画『君の名は。』の登場人物。主人公のバイト先の先輩)

選ばれなかった側が、去り際に贈る言葉です。恨みも当てこすりもなく、ただ相手の未来を願っている。

こういう台詞を言える人になるのは、実はとても難しい。恋が終わったあとの態度に、その人の恋の質が全部出ます。うまく別れられることは、うまく愛せることと同じくらい価値のある能力です。


恋が教えてくれること

恋愛映画は恋の話をしているようで、たいてい「その人がどう変わったか」の話をしています。

「三葉が笑うと……今になって俺は気付く。世界までが一緒になって喜んでるみたいだ」
── 立花瀧(アニメ映画『君の名は。』の主人公。東京の男子高校生)

好きな人が笑っただけで、世界の明るさが変わる。恋がもたらす最もわかりやすい変化は、相手ではなく風景のほうに起きます。

恋をしている人の話がやたら細かくなるのは、そのせいです。今まで気づかなかった街の色や、天気や、音が急に見えるようになる。恋は感覚器の解像度を上げる装置でもあります。

「私、背伸びして良かった。自分のこと前より少し分かったから。」
── 月島雫(アニメ映画『耳をすませば』の主人公。物語を書く中学生)

好きな人に追いつこうとして無理をした結果、手に入ったのは相手ではなく自分についての知識だった、という総括です。

恋は、自分の限界と可能性を一度に見せてくれます。うまくいかなかったとしても、その過程で分かった自分は残ります。恋が終わっても損ではない理由が、この一行に入っています。

「もし神がいるとしたら、それは私たちひとりひとりの中じゃない。人と人のあいだの、あのわずかな空間にいる。この世界に魔法があるとすれば、それは誰かを理解しようとする試みの中にある」
── セリーヌ(映画『恋人までの距離』のヒロイン。パリの大学生)

一夜だけを共に過ごす二人の会話の中で、彼女が語る言葉です。愛は誰かの内側にあるのではなく、二人の「あいだ」に発生する、と言っています。

だから愛は、片方が努力すれば維持できるものではありません。理解しようとする試みが、両側から差し出されているあいだだけ、そこに小さな空間が生まれる。恋愛の定義として、これ以上正確なものを私は知りません。

「愛されるより、愛することの方が大切だと思います」
── オードリー・ヘプバーン(『ローマの休日』の主演女優。晩年はユニセフ親善大使)

愛されたいと願っているあいだ、主導権は常に相手の側にあります。愛すると決めた瞬間に、それが自分の手に戻ってきます。

これは我慢のすすめではありません。自分の人生の運転席に座り直すための提案です。誰かに選ばれるのを待つ時間を、誰かを大事にする時間に置き換える。それだけで、日々の手触りは変わります。

「明日は明日の風が吹く」
── スカーレット・オハラ(映画『風と共に去りぬ』の主人公。南部の農園主の娘)

愛した人に去られた直後の台詞です。反省でも慟哭でもなく、いったん考えるのをやめる、という宣言でした。

失恋した日にできることは、あまり多くありません。眠って、明日を待つ。それを弱さではなく戦略として言い切ったところに、この台詞が百年近く生き延びた理由があります。

「人間は決定的なことって言葉で考えたりはしないんです。「どうして僕は、彼女が好きなんだろう」って考えたりはしない。そんなことは分析したって無駄なんですよ」
── 宮崎駿(アニメーション映画監督。『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』)

理由を探し始めた時点で、もう少し話がややこしくなっています。好きに理由がいらないのは、それが判断ではなく事実だからです。

自分の気持ちを分析して安心したくなるのは、傷つきたくないからでしょう。けれど分析は、たいてい踏み出さないための言い訳になります。分からないまま進む勇気のほうが、恋には向いています。


恋愛映画をつくる人たちの、愛の話

最後に、そういう物語を何十年も作り続けてきた人たちの言葉を並べます。台詞の裏側にある設計図のようなものです。

「すべての恋愛映画は、時間についての映画だ」
── ウォン・カーウァイ(香港の映画監督。『恋する惑星』『花様年華』)

一秒の差で出会えたこと、間に合わなかったこと、待った年月、忘れるまでの期間。恋の話は、結局どこかで時間の話になります。

この一行を頭に入れて恋愛映画を観直すと、見え方が変わります。二人が抱えているのは相手への感情ではなく、共有した時間と、共有できなかった時間の落差なのだと分かってきます。

「雨は人を結びつける。 家から出られなくなるから、誰かと一緒にいたくなったりする。 恋人たちがいて、ふたりが一緒のときは、いつも雨が降るような映画を撮りたい」
── ウディ・アレン(アメリカの映画監督・脚本家。『アニー・ホール』)

恋愛映画に雨のシーンが多い理由を、これほど実務的に説明した言葉もありません。雨は二人を同じ屋根の下に閉じ込める装置です。

現実でも同じことが起きます。予定が崩れた日、電車が止まった日に、関係が一歩進むことがある。恋が育つのは、うまくいっている時間ではなく、逃げ場のない時間のほうかもしれません。

「映画というのはそうだなあ、「傷つきあって、許し合って、愛を覚える。」というのが、あらゆる映画のテーマでしょうかね」
── 大林宣彦(映画監督。『転校生』『時をかける少女』)

順番が重要です。傷つけ合うことが先にあり、許すことがあり、そのあとでようやく愛が来る。最初から愛がある物語は、たぶんつまらないということでもあります。

現実の関係も、この順番をなぞります。まだ傷つけ合っていない関係は、単に始まっていないだけかもしれません。

「僕の年になっても何で青春映画が見ていられるのかっていうと、みんなが通った経験値が基にあるから。根本に見え隠れする想いとか、恋心とか、失意とか、絶望とか、そういうみんなの想いが小説になっているというか」
── 行定勲(映画監督。『世界の中心で、愛をさけぶ』『きょうのできごと』)

何歳になっても青春の恋の話が刺さるのは、それが過去の話ではなく、自分の中にまだ残っている領域だからです。

恋愛映画を観て恥ずかしくなるとしたら、それは登場人物ではなく、自分の中の同じ場所が反応しているからでしょう。その反応が残っているうちは、まだ恋ができます。

「黄金パターンは黄金パターンであっても、それを活き活きとできるかどうかなんですよ。男と女がいて恋をするなんていうのは、もう大昔からいくらでもやられてることでね、みんなすっかり見飽きたパターンですよ。それでも、やっぱり説得力を持ってて感動できる恋物語と、そんなもん勝手にすればっていう恋物語ができてしまう。それは作る側が、その恋という問題に対して、毎度おなじみだけど、どれほど真摯になれるかどうかでしょう。だから、僕はパターン化することについては全然恐れていません」
── 宮崎駿(アニメーション映画監督。『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』)

恋の物語に新しさなどない、と言い切ったうえで、それでも真摯であれば人の心は動く、と続けます。これは映画作りの話であると同時に、私たち自身の恋の話でもあります。

自分の恋がありふれていることを、恥じる必要はありません。人類が何万回も繰り返してきた同じパターンを、自分だけは本気でやる。それだけで、その恋は誰にとってもかけがえのないものになります。


恋愛映画の名台詞は、言えたはずの言葉の見本帳のようなものです。私たちがスクリーンの前で泣くのは、登場人物に共感しているからではなく、自分が言いそびれた言葉をそこで見つけてしまうからでしょう。

だとすれば、映画を観るのは予行演習でもあります。次に誰かの前に立ったとき、少しだけ早く、少しだけ正直に言えるように。名台詞は覚えるためではなく、いつか自分の言葉で言い直すためにあります。

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この記事で紹介された名言

01

忘れないで。私だってただの女の子。一人の男の子の前に立って、愛してほしいと願っているだけなの

アナ・スコット

Anna Scott

02

雫、大好きだ!

天沢聖司

03

おまえを乗せて……坂道のぼるって……決めたんだ!

天沢聖司

04

亜紀といると楽しいし、亜紀といるとすぐに時間が経ってしまいます。今更ですが、僕と付き合ってください

松本朔太郎

05

あなたが『ハロー』と言ったときから、私はもうあなたのものだったの

ドロシー・ボイド

Dorothy Boyd

06

同じさ

サム・ウィート

Sam Wheat

07

隣の席に座ったこともあるんだぞ。

天沢聖司

08

一秒の差で出会えなかった二人を想像してみろ

ウォン・カーウァイ

Wong Kar-wai

09

君の瞳に乾杯

リック・ブレイン

Rick Blaine

10

私たちは会えば絶対すぐに分かる

宮水三葉

Mitsuha Miyamizu

11

ハートはハートが望むものを望むんだ。そこにロジックなどない。誰かと出会って恋に落ちる、それだけだ

ウディ・アレン

12

ローマです。何と申しましてもローマです

アン王女

Princess Ann

13

地上のすべてをあきらめたら、人はいつか空を飛べると誰かが言った

山音麦

14

君が飛ぶなら、僕も飛ぶ

ジャック・ドーソン

Jack Dawson

15

人生は贈り物だと思ってます。ムダにしたくない

ジャック・ドーソン

Jack Dawson

16

言おうと思ったんだ、お前がどこの世界にいても、俺が必ずもう一度会いに行くって

立花瀧

Taki Tachibana

17

簡単じゃない。すごく大変だろう。それでも僕は毎日、そのために努力する。君が欲しいから

ノア・カルフーン

Noah Calhoun

18

人生においてしっかりつかまえておきたい最高のものは、お互いの存在

オードリー・ヘプバーン

19

愛は行動なのよ。言葉だけではだめなの

オードリー・ヘプバーン

20

食べ物の好みが変わるように、人も変わる。ただそれだけのことだ

ウォン・カーウァイ

Wong Kar-wai

21

長続きするたった一つの愛は片想い

ウディ・アレン

22

恋をすることは苦しむことだ。苦しみたくないなら、恋をしてはいけない。でも、そうすると、恋をしていないということでまた苦しむことになる

ウディ・アレン

23

私はずっとあなたを愛してる

ミア・ドーラン

Mia Dolan

24

君と幸せだったパリの思い出があるさ

リック・ブレイン

Rick Blaine

25

君も、いつかちゃんと幸せになりなさい

奥寺ミキ

Miki Okudera

26

三葉が笑うと……今になって俺は気付く。世界までが一緒になって喜んでるみたいだ

立花瀧

Taki Tachibana

27

私、背伸びして良かった。自分のこと前より少し分かったから。

月島雫

28

もし神がいるとしたら、それは私たちひとりひとりの中じゃない。人と人のあいだの、あのわずかな空間にいる。この世界に魔法があるとすれば、それは誰かを理解しようとする試みの中にある

セリーヌ

Celine

29

愛されるより、愛することの方が大切だと思います

オードリー・ヘプバーン

30

明日は明日の風が吹く

After all, tomorrow is another day.

スカーレット・オハラ

Scarlett O'Hara

31

人間は決定的なことって言葉で考えたりはしないんです。「どうして僕は、彼女が好きなんだろう」って考えたりはしない。そんなことは分析したって無駄なんですよ

宮崎駿

32

すべての恋愛映画は、時間についての映画だ

ウォン・カーウァイ

Wong Kar-wai

33

雨は人を結びつける。 家から出られなくなるから、誰かと一緒にいたくなったりする。 恋人たちがいて、ふたりが一緒のときは、いつも雨が降るような映画を撮りたい

ウディ・アレン

34

映画というのはそうだなあ、「傷つきあって、許し合って、愛を覚える。」というのが、あらゆる映画のテーマでしょうかね

大林宣彦

大林宣彦

35

僕の年になっても何で青春映画が見ていられるのかっていうと、みんなが通った経験値が基にあるから。根本に見え隠れする想いとか、恋心とか、失意とか、絶望とか、そういうみんなの想いが小説になっているというか

行定勲

36

黄金パターンは黄金パターンであっても、それを活き活きとできるかどうかなんですよ。男と女がいて恋をするなんていうのは、もう大昔からいくらでもやられてることでね、みんなすっかり見飽きたパターンですよ。それでも、やっぱり説得力を持ってて感動できる恋物語と、そんなもん勝手にすればっていう恋物語ができてしまう。それは作る側が、その恋という問題に対して、毎度おなじみだけど、どれほど真摯になれるかどうかでしょう。だから、僕はパターン化することについては全然恐れていません

宮崎駿