子育てに「正解」はありません。昨日うまくいった声かけが今日は通じず、よその家の落ち着いた子を見ては焦り、夜に寝顔を見ては「もっと優しくできたはず」と反省する。そんな毎日を繰り返している方も多いのではないでしょうか。
この記事では、子どもを育てる人、子どもと向き合うすべての大人に向けて、古今東西の言葉とことわざを37集めました。育児の専門家の言葉もあれば、芸能人や作家がふと漏らした本音、そして昔から語り継がれてきたことわざもあります。
どの言葉にも共通しているのは、子どもを「変えよう」とするより先に、まず大人のあり方を見つめ直そうという視線です。肩の力を抜いて、気になる言葉から読んでみてください。
親になる、という戸惑い
最初に、親になったばかりの戸惑いや、完璧にはなれない自分を受け入れるための言葉を集めました。
「子が生まれた時に親も産まれるんだ。最初から出来る親は居ない最初から立てる子供は居ない1人で抱え込まず人に頼るのが良い」
── 兼近大樹(お笑い芸人)
赤ちゃんが生まれた日は、親としての自分が生まれた日でもあります。初めから上手にできる人はいない、と言い切ってくれるだけで気持ちが軽くなります。誰かに頼ることは弱さではなく、親としての第一歩だと教えてくれる言葉です。
「俺も親は初めてやから、分からへん。でもな、子どもは一回経験してる。だからお前らの気持ちは一番わかるで」
── 島田紳助(タレント)
親は「親」としては初心者でも、「子ども」としては経験者です。かつて自分が何を言われて傷つき、何をされて嬉しかったかを思い出せば、そこに子育てのヒントが眠っています。完璧な正解を探す前に、自分の子ども時代に戻ってみるのも一つの道です。
「子どもなんだもの、思う通りにいかなくて当然」
── 高島彩(フリーアナウンサー)
片付けない、食べない、言うことを聞かない。思い通りにならないことに腹が立つ日は、この言葉を思い出したいものです。「当然」と受け止めた瞬間、苛立ちは少し静まります。子どもが思い通りにならないのは、その子が自分の意思を持って育っている証でもあります。
「子供を幸せにしたかったら、育児の担い手がまず幸せにならないといけない」
── 経沢香保子(起業家)
子どものために自分を後回しにし続けると、いつか心がすり減ってしまいます。親が疲れ切った笑顔で子どもに向き合うより、親自身が休み、楽しみ、満たされている方が、子どもにとっても安心できる家庭になるはずです。自分をいたわることも、立派な育児の一部です。
「子育ては人生の最大の恵み」
── アグネス・チャン(歌手・タレント)
大変さの只中にいると見えにくくなりますが、子どもと過ごす時間は、二度と戻らない贈り物でもあります。短い言葉ですが、苦労も含めて「恵み」と呼べる境地に、多くの親が後から気づくのかもしれません。しんどい日の終わりに、そっと思い返したい一言です。
「子を持って知る親の恩」
── 作者不明
自分が親になって初めて、かつての親の苦労や愛情の深さが分かる。昔から言われてきたことわざです。子育ての渦中で、ふと自分の親の顔が浮かぶことがあります。感謝を伝えるのに遅すぎることはありませんから、機会があれば一言添えてみてはいかがでしょうか。
「子はかすがい」
── 作者不明
夫婦の間に子どもがいることで、二人のつながりが保たれる。そう語り継がれてきたことわざです。子どもは親を悩ませもしますが、同時に家族を一つにまとめる存在でもあります。子どもを中心に家族が笑い合う場面を思い浮かべると、この言葉の温かさが伝わってきます。
「自分が頑なになってしまう時、子どもたちを通して非常にオープンになったり、ソフトな面を見つけられたりします」
── アンジェリーナ・ジョリー(俳優)
子育ては、子どもを育てるだけでなく、親自身を育て直す時間でもあります。かたくなだった自分が、子どもの無邪気さにほどかれていく。そうした変化を素直に認める姿勢に、多くの親が共感するでしょう。子どもは、親の中の優しさを引き出してくれる存在です。
言葉より、背中を見ている
子どもは大人が思う以上によく観察しています。ここでは、「何を言うか」より「どう生きるか」を問う言葉を紹介します。
「子は親の背中を見て育つ」
── 作者不明
子育てに関する最も有名なことわざの一つです。「勉強しなさい」と百回言うより、親が本を読んでいる姿の方が子どもの心に残る。耳が痛い話ですが、裏を返せば、特別な教材がなくても、毎日の暮らしそのものが教育になるということでもあります。
「10個の言葉で教えるより背中で見せる、それが私のできる子育てと思うから」
── 宮沢りえ(女優)
言葉で教え込むことには限界があります。親が仕事に向き合う姿や、困っている人に声をかける姿、失敗して謝る姿。そうした日常の一場面が、子どもにとって最も説得力のある教科書になります。背中で見せる覚悟が、そのまま子育ての方針になっています。
「子の手本になろうという心掛けが子育ての原点」
── 志茂田景樹(作家)
立派な手本になれるかどうかより、「手本になろう」と心がけること自体に価値がある、という言葉です。完璧でなくても、間違えたときに素直に認める姿もまた手本になります。自分の言動を一度立ち止まって見直すきっかけを与えてくれます。
「子どもは大人の話を聞くのはあまり得意でないが、大人のマネをするのはとても上手だ。」
── ジェームズ・ボールドウィン(アメリカの作家)
この言葉は、1960年に雑誌『エスクァイア』に発表された評論の中で語られたとされています。説教は聞き流されても、大人の振る舞いはそのまま写し取られていく。子どもの前でつい出てしまう口癖やため息も、しっかり見られていると思うと、背筋が伸びます。
「三つ子の魂百まで」
── 作者不明
幼い頃に身についた性格や気質は、年を重ねても変わらない。昔から言われてきたことわざです。だからこそ、乳幼児期の安心感や愛情が大切だと説かれてきました。ただ、これは「手遅れ」という意味ではなく、幼い日々を大切にしようという励ましとして読みたい言葉です。
ほめ方、叱り方、比べ方
声かけ一つで、子どもの自己イメージは大きく変わります。ここでは、日々のコミュニケーションを見直すための言葉を並べました。
「子育てで子供を比較してはいけません」
── 加藤諦三(社会学者・心理学者)
きょうだいや友だちと比べたくなる気持ちは、どの親にもあります。けれども比べられた子は、「自分はそのままでは足りない」と感じてしまいかねません。比べる相手は他の誰かではなく、昨日のその子自身です。小さな成長を見つけてあげることが、何よりの励ましになります。
「子育ての基本は「褒める」「ともに喜ぶ」です」
── 諸富祥彦(心理学者)
ほめるとは、結果を評価することではなく、子どもの喜びに寄り添うことでもあります。テストの点数だけでなく、昨日できなかったことができた瞬間を一緒に喜ぶ。そうした経験の積み重ねが、子どもの自信という土台をつくっていきます。
「ほめられて育つと、子どもは感謝することをおぼえる。」
── ドロシー・ロー・ノルト(アメリカの家庭教育カウンセラー・著述家)
ノルトの詩「Children Learn What They Live(子は、その暮らしの中から学ぶ)」の一節です。原文では「If a child lives with praise, he learns to appreciate」とされ、新聞の家庭コラムを通じて広まりました。感謝の心は、まず感謝される経験の中で育つのだと気づかされます。
「認められて育つと、子どもは自分を好きになる。」
── ドロシー・ロー・ノルト(アメリカの家庭教育カウンセラー・著述家)
同じ詩の「If a child lives with approval, he learns to like himself」にあたる一節です。自分を好きになる力は、他人から認められた記憶の蓄積から生まれます。成績や行動の良し悪しにかかわらず、存在そのものを受け止める言葉をかけたいものです。
「公正さの中で育つと、子どもは正義を学ぶ。」
── ドロシー・ロー・ノルト(アメリカの家庭教育カウンセラー・著述家)
こちらも同じ詩の一節で、原文は「If a child lives with fairness, he learns justice」です。大人が約束を守り、感情に任せず筋の通った対応をすること。その積み重ねの中で、子どもは正しさとは何かを自然に身につけていきます。親の態度が最初の道徳教育になります。
「子供の教育について最悪の間違いは、親や教師が、誤った道にさまよっている子供らに向かって、悪い結末を予言してやることである」
── アルフレッド・アドラー(オーストリアの心理学者)
「そんなことをしていたら将来困るよ」という言葉は、心配から出るものですが、子どもには「あなたはダメになる」という予言として響いてしまうことがあります。悪い未来を語る代わりに、いまできる小さな一歩を一緒に探す。それがアドラーの示した態度です。
「子どもは親が貼ったレッテル、たとえば「しっかりした子」「甘えん坊」「おてんば」「恥ずかしがり屋」などに対して過剰に応えようと努力する」
── アルフレッド・アドラー(オーストリアの心理学者)
「うちの子はこういう子」という決めつけは、ほめ言葉であっても子どもを縛ることがあります。しっかり者のレッテルを貼られた子は甘えられなくなり、恥ずかしがり屋と言われた子は挑戦をためらう。ラベルを一度はがして、目の前の子をまっさらな目で見たくなります。
「他人の子もしっかり叱ってあげなくちゃいけない。おとなは子どもを導かないといけないんだ」
── 宇津木妙子(元ソフトボール日本代表監督)
地域のなかで子どもを見守る大人の責任を語った言葉です。現代では他人の子を叱ることが難しくなりましたが、危険や理不尽を見過ごさないことは、子どもへの無関心ではない証です。叱るとは感情をぶつけることではなく、導くことだと再確認させてくれます。
失敗も挑戦も、奪わない
子どもを守りたい気持ちが強いほど、先回りして転ばぬ先の杖を出したくなります。ここでは、失敗や経験の機会を大切にする言葉を集めました。
「大人になってから『間違う』ことがないように子どもを育てるのが親の役目やろ?なのに子どもから『間違うこと』を取り上げてしまってはいけない」
── 丸尾孝俊(実業家)
子どもの失敗を先回りして防ぐのは、愛情から出る行動です。しかし、小さな失敗を経験する機会が奪われると、大人になってから大きな失敗に対処する力が育ちません。転んで膝をすりむくことも、成長に必要な学びだと捉えてみませんか。
「誰かを育てようと思ったら、一緒に失敗してやる覚悟も必要である」
── 工藤公康(元プロ野球選手・監督)
指導者としても多くの選手を育ててきた工藤氏の言葉です。教える側は、失敗の責任を引き受ける覚悟を持ってこそ、相手が挑戦できる環境をつくれます。子育ても同じで、子どもがつまずいた時に「一緒に考えよう」と言える親でありたいものです。
「子供を不幸にする一番確実な方法は何か。それをあなた方は知っているだろうか。それはいつでも何でも手にいれられるようにしてやることだ」
── ジャン・ジャック・ルソー(フランスの啓蒙思想家)
『エミール』で知られるルソーの、教育への警句です。欲しいものがすぐ手に入る環境では、待つことや我慢すること、工夫することを学べません。何でも与える優しさと、あえて与えない優しさ。そのバランスを問い続けることが、親の仕事なのかもしれません。
「可愛い子には旅をさせよ」
── 作者不明
大切な我が子だからこそ、手元に置いて甘やかすより、広い世間で苦労や経験を積ませた方がよい。昔から語り継がれてきたことわざです。旅は遠い土地へ行くことだけでなく、初めてのおつかいや一人での挑戦も含めて、子どもが自分の足で踏み出す経験と読むことができます。
「大切なのは、子どもたちに、どんな事があっても動じない生き方を教える事です」
── 七田眞(幼児教育者)
幼児教育に長く携わった七田氏の言葉です。知識や技術以上に、困難に出会っても自分を見失わない心の強さを育てることが大切だと説いています。それは、親が日々の小さな出来事に落ち着いて向き合う姿を見せることからも育まれていくのでしょう。
「自分の子供にくたばれって言う親がどこにいる! 親は子供に生き抜けっていうもんだろうが!」
── 野原ひろし(『クレヨンしんちゃん』の父親)
アニメの中の父親が、家族を守るために叫んだ台詞です。どれほど叱っても、反抗されても、親の根っこにあるのは「生きていてほしい」という願いです。この単純で力強い真実を思い出すと、日々の小言や衝突の意味も、少し違って見えてきます。
ひとりの人間として、送り出す
子どもは親の所有物ではなく、それぞれ独立した一人の人間です。最後に、子どもの個性や未来を信じ、手を放していく心構えを教えてくれる言葉を紹介します。
「あなたは弓であり、あなたの子どもはあなたから、飛びたつ矢である。」
── ハリール・ジブラーン(レバノン出身の詩人・思想家)
ジブラーンの詩のなかでも特に知られる一節です。親は弓として、矢である子どもを安定して支え、やがて遠くへ放つ役割を持つ。しなやかに力を込めて、子どもが飛んでいく方向を信じて見送る。親の愛とは手放すことでもあると静かに教えてくれます。
「子どもは大人の父である」
── ワーズワース(イギリスの詩人)
詩「虹」(My Heart Leaps Up)の一節として知られています。幼い頃に抱いた感動や純粋さこそが、大人になった自分の土台をつくっているという意味に読めます。子どもから教わることは多く、大人の方が見失ったものを子どもが思い出させてくれる、という見方もできます。
「どの子も子どもは星みんなそれぞれがそれぞれの光をいただいてまばたきしている」
── 東井義雄(教育者)
兵庫県で教育に携わった東井氏らしい、子どもへの温かなまなざしを感じる言葉です。どの子も違う光を持っていて、明るさや色を比べる必要はない。夜空に無数の星があるように、一人ひとりの輝きを見つけてあげるのが、大人の役目なのだと気づかされます。
「学校が有名になることより、子どもが幸せになることの方が大事」
── 木内幸男(元高校野球監督)
勝利や評判を追う世界に身を置いた指導者が語ったからこそ、重みのある言葉です。偏差値や成績、肩書といった目に見える成果より、その子が幸せに生きられるかを基準にする。親としても、進路を考える時に立ち返りたい物差しです。
「子どもたちに自分の良さを気づかせてあげることが大事」
── アグネス・チャン(歌手・タレント)
自分の良さは、自分ではなかなか気づけないものです。だからこそ周りの大人が、その子らしさや得意なことを言葉にして伝えてあげる必要があります。「あなたのここがいいね」という一言が、子どもの心に長く残る宝物になるかもしれません。
「敵を倒さなくてもいいから、例えば、落ち込んでいる子供がいたら「大丈夫だよ」と言ってあげる大人の方がヒーローだよなと思ったりする」
── 重松清(作家)
物語の中のヒーローは強く敵を倒しますが、現実には、落ち込んだ子の隣で「大丈夫だよ」と言える大人こそがヒーローだ、という視点です。特別なことをしなくても、安心できる言葉を届けることが、子どもにとって大きな支えになります。
「子供の好奇心を殺すな。それは人類最大の宝だ」
── ニール・ドグラース・タイソン(アメリカの天体物理学者)
「どうして空は青いの」「なんで?」の連発に疲れる日もありますが、その問いこそが科学や発見の原点です。答えられなくても、一緒に調べる姿勢を見せるだけで、好奇心の芽は守られます。面倒くさがらずに付き合うことが、未来への投資になります。
「大体、いちばん素晴らしい絵を描くのは四、五才くらいの子どもだよ」
── 岡本太郎(芸術家)
上手に描こうという意識を持たず、ただ描きたいものを描く。そこに表現の原点があると、岡本太郎は見ていたのでしょう。子どもの落書きを「上手か下手か」で評価せず、その自由さをそのまま楽しむことが、創造力を守ることにつながります。
「親はなくとも子は育つ」
── 作者不明
親がいなくても、子どもは周りの支えや自らの力でたくましく育っていく。そんな意味で語り継がれてきたことわざです。親だけが子育てのすべてを背負う必要はなく、周囲の人や社会、そして子ども自身の力を信じてよい、という励ましとしても読めます。
「鳶が鷹を生む」
── 作者不明
平凡な親から、優れた子どもが生まれることのたとえです。親の想像を超えた可能性が、子どもの中に眠っているかもしれません。親の期待という枠に収めようとせず、思いがけない才能が芽吹く日を楽しみに待つ。そんな大らかな気持ちで、子どもの未来を見守りたいものです。
子育ては、答えのない問いに毎日向き合う営みです。うまくいかない日があっても、あなたが子どものことを考えて悩んでいること自体が、すでに大きな愛情の表れです。今日の言葉のなかに、心に残る一つがあったなら、それを今夜の合言葉にしてみてください。完璧を目指さず、子どもと一緒に少しずつ育っていけたら、それで十分です。